「5点の差はどこから出たか」という疑問に答える試み。


 バンクーバー五輪フィギュアスケートは、2/24(水)に女子シングルSPが行われました。
 浅田真央選手、73.78点。キム・ヨナ選手、78.50点。
 この5点の差がどこから来ているのか分からない人への説明を試みます。


 ただし、加点の幅について「ジャッジの採点には納得がいかない」という人への答えはありませんし、説得もしませんし、私が答えることも出来ませんのでご了承ください。

ジャンプの基礎点 浅田:18.5 ヨナ:19.0

 「え、浅田選手はトリプルアクセル跳んだのに点数で負けてるの?」
 そう思う人が多いと思います。トリプルアクセルそれ自体はもちろん高得点です。
 しかし、浅田選手のジャンプはあくまでも3回転+2回転のコンビネーション。


 ヨナ選手の3回転+3回転の連続ジャンプ、それも難しいルッツから跳ぶというのは、浅田選手のトリプルアクセルに匹敵するくらい高難易度の技なのです。


 ちなみに他の基礎点は、奇しくも全て同じでした。スピン、ステップ、スパイラルの獲得レベルも同じです。

ジャンプの質の加点(合計) 浅田:2.4 ヨナ:4.8
(内訳)
コンビネーションジャンプ 浅田:0.6 ヨナ:2.0
トリプルフリップ 浅田:0.2 ヨナ:1.2
ダブルアクセル 浅田:1.6 ヨナ:1.6


 今回は、ここで大きく差がつきました。


 浅田選手の3アクセル+2トウループは、難易度が高い分どうしても跳ぶのに精一杯で、流れが止まってしまいます。これはあまり高い加点は望みにくいです。
 一方、ヨナ選手の3ルッツ+3トウループは、高さ、幅、スピードともに揃った迫力のあるものでした。女子でこれだけの質のジャンプを出来る選手はあまりいません。これは高い加点を貰うのも頷けます。


 浅田選手の3フリップは、以前の失敗を恐れてかちょっと慎重に跳びにいったように感じました。ジャンプの前にやや溜めがあるのでそれが加点から差し引かれていそうです。
 ヨナ選手の3フリップは、ターンから即座に踏み切っていますし、迫力もあるように見えます。


 ダブルアクセルについては、両者とも難しい入りから流れのある美しいジャンプでしたね。


 加点の幅について議論はあると思いますが、私はそれぞれの技を見直してみて、それなりに納得できる点の付き方だとは思いました。

スピンの質の加点(合計) 浅田:1.7 ヨナ:2.3
スパイラルの質の加点 浅田:2.0 ヨナ:2.0
ステップの質の加点 浅田:1.0 ヨナ:0.7


 これらの要素は微妙な差なので、どこが決め手になったかはちょっと分かりません。


 浅田選手のステップの方がもっと上では?という意見もありますが、身体が沢山動いていれば点が付くというわけではありません。全体のスピードや、エッジの使い方なども評価の対象になります。
 また、スパイラルも単に姿勢の柔軟性だけで評価されているわけではありません。
 ジャッジがどこを評価したかまでは私には分かりませんが、ネット上では要素の一部分だけを取り上げて批判している人が多いように思います。

演技構成点 浅田:32.28 ヨナ:33.80


 これは私の印象となってしまいますが、全体的に、浅田選手は緊張感があって身体が動ききっていないように思えた部分がありました。
 ジャッジがそこをみたかどうかは分かりませんが、曲への調和や表現力などを考えても、1.5程度の差はありえると思います。



 これで合計4.72点差がついたわけですが、現在のフィギュアの採点システムは、あくまでも各要素別に評価をした後、それを最終的に積み上げて合計を出します。
 決して「こっちの選手の方が全体的に良かったから、5点くらい上にしよう」とか「トリプルアクセルも入ってて甲乙付けがたいから、2点差くらいかな?」などという採点をしているわけではありません。
 それぞれの技の出来栄えを評価した結果、合計したらこの点差になったという話です。


 昔の6.0点満点のルールは全ての要素がどんぶり勘定で、選手は何が高評価されたのか/されなかったのかが全く分からないということで、このような現行ルールになったという経緯があります。


 この記事が採点ルールを知らなかった方の理解の助けになれば幸いです。


 ※ルールを把握した上で、その上でジャッジの判断に対して納得がいかないという方の苦情はこちらでは受け付けかねますのでご了承ください。