シリアスゲーム『My Child Lebensborn』をプレイした感想
「楽しい気持ちになれるもの」をゲームとするなら、本作はゲームにあらず。
「心を揺さぶられるもの」をゲームとするなら、本作は紛れもなくゲームである。
今までプレイしてきた中でも、なかなかに衝撃的な体験をしたゲームの紹介です。
『My Child Lebensborn』(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)は、とある事情で養子に引き取った子供を、プレイヤーが育てていく育成シミュレーションゲームです。
そしてもう一つ、このゲームをカテゴライズするとすれば「シリアスゲーム」となります。
(※シリアスゲーム = 純粋な娯楽目的でなく、社会問題についての示唆などが含まれているゲーム)
起動時に警告がありますが、本作にはいじめや虐待、迫害などの不快な描写が含まれており、プレイする人をとても選びます。
また、戦時のナチスドイツとノルウェーの民族問題を扱っており、テーマも非常にセンシティブになっています。
皆さんが、普通の「育成ゲーム」といえば思い描くのは次のようなゲームではないでしょうか。
『愛情を注ぎ、子供からの問いかけに真摯に答えていれば、子供はすくすくと健全に育ってくれるし、直面する辛い問題は努力できっと克服できる』
しかしこのゲームは、そんな常識を木っ端微塵に打ち砕いてきます。
裕福でない暮らしをする主人公は、毎日を頑張って行動していても、子供のお腹も満足に満たせず、立派な服も買ってあげられない。
子供からの問いかけは、正直に答えて良いものか、真実を隠すべきか、難しい決断を迫られるものばかり。
そして子供の出自に関するいわれなき迫害と差別。学校でのいじめ。親としての自分が出来ることは非常に限られており、問題を満足に解決してあげることも出来ないジレンマ。
更にプレイ後に重い気持ちになるのは、これが決して架空の話ではなく、当時の(今でもなのかもしれません)ノルウェーに実際にあった物語、ということです。
ゲーム中のこととはいえ、辛く悲しい気持ちになるシーンが多いため、万人にオススメはなかなかしづらいのが正直なところです。
私自身、プレイしてよかったか(面白かったか)と尋ねられたら……、うーん……。「強烈な体験であった」と答えるべきでしょうか。
この作品がシリアスゲームの形を取ることで、選択肢の一つ一つに重みが生まれ、小説やドキュメンタリー映画であったら感じ取れない体験をした、とはいえるかもしれません。
実はこのゲームをプレイした私自身、子育てを始めたばかりの人間なのですが、これから子供にどう接していくのか。もしも子供の身に何かがあった場合、親としてどう行動するべきか。
答えのない問いを考えさせられてしまう。そんな体験を心に残したゲームでした。