『ジラフとアンニカ』が程よいボリュームの良作ゲームだった

「メルヘンチックな絵本のような世界で、猫耳の少女アンニカがふしぎな島を探検する」

『ジラフとアンニカ』は一言で表せば、そんなゲームです。

 

『ジラフとアンニカ』の画面

まるで童話のような世界観。

『ジラフとアンニカ』公式サイト(https://www.giraffeandannika.com/

 

感想は、「夏休みに、ノーマークだったアニメ映画を一本観てみたらとても丁寧な出来だったので大満足」といった言い方で雰囲気が伝わるでしょうか…。(伝わらないか…?)

 

『ジラフとアンニカ』の魅力

  • 主人公アンニカの可愛さ
  • 電子コミックのように読み進むほのぼのしたイベントパート
  • 後半に向けて盛り上がるストーリー
  • 統一感の取れた雰囲気のいいBGM
  • 10時間弱でクリアできる、程よいボリューム感

ゲーム中にはダンジョンやボス戦などもあるのですが、攻撃とかバトルのようなものはない優しい世界観。

ボス戦はリズムゲームになってますが、難易度は選べるので苦手な人でも全然OK。

殺伐とした日常に疲れてしまったなー、という人には特にオススメ出来るかもしれません。

 

ストーリーは最初掴みどころのない感じで、特に使命感も目的もなくフワッとした感じのままお話は進むのですが、クリアまでやってみるとそれも納得という感じに仕上がっています。

 

開発は「atlier mimina」でインディーズゲームだそうですが、グラフィックスやキャラモデル、音楽など、メジャータイトルと比較してもあまり遜色ないクオリティと感じます。

キャラクターのモーションは可愛いですし、特にダンスの振り付けにはこだわりを感じましたね。

冒険の舞台の「スピカ島」には、思わずスクリーンショットを撮りたくなってしまう美しい風景がありますし、時間経過で昼夜が移り変わっていくのも良いです。

イベントシーンは電子コミックのように読み進むのですが、3Dモデルの会話で進めるよりもキャラの表情が豊かで、これは作品の特徴を生かした上手いシステムだなと感じました。

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電子コミック風のイベントシーン(書き文字とかはアニメする)

 

クリア時間「10時間」は、とっても魅力的

クリアまでのプレイ時間は10時間弱ほど(私の場合8時間ほど)で大作ではないのですが、その分、丁寧に愛情を持って作られているゲームだと思います。中だるみ感もあまり感じなかったかな?

後半のストーリーもなかなか素晴らしく、ボリュームは短めでもしっかりと満足感を得ることができました。

 

私は最近、ゲームをプレイするのにあまり時間を取ることが出来ないので、「10時間弱でゲームを一作品きっちり最初から最後まで味わえる」というのは、とてもプラスの要素だと思います。

 

忙しい日々の中で、「そういえば最近、エンディングのあるゲームを一本やりきっていないな……」と感じる人にはオススメできるかもしれません。


2000円前後のお値段もお手頃ですね。(SwitchのDL版が2,480円)

 

クラリネットが主役のBGM

ゲーム音楽ファンとして注目したいのは本作のBGMで、ピアノを中心としたアコースティックな音楽の中に、全編に渡ってクラリネットが主役として出てきます。

(※作曲者の方によると、クラリネットが主人公のアンニカを表しているらしいです(友人談)。
ライナーノーツが読みたい……。曲のデジタル配信にライナーノーツのPDFも含めてください……)


クラリネットは音色の幅が広い楽器ですが、木管楽器のやさしい牧歌的な音色を基調としながらも、ぴょんぴょんと飛び跳ねるような軽快な音色、不安を感じる低い不気味な音色など、シーンに応じて効果的に使われています。

同じ木管楽器でも、軽やかな音色のフルートや哀愁漂うオーボエゲーム音楽でも特に多様されますが、クラリネットがここまで主役として使われているゲーム音楽はあまり無いんじゃないかな……?と思います。

 

 

『ジラフとアンニカ』はこんな人にオススメ

本作は決してメジャーなRPGのような「大作」ではありません。

際立って斬新なシステムというものもなく、手に汗握るスリリングなアクションもなく、頭を使う戦略性、なんでも出来る自由度、どこまでも続けられるやりこみ要素などと言った人気大作タイトルにあるような要素はありません。

 

ですが、まるでハンドクラフトのような、丁寧に作られて雰囲気のよい、きちんとまとまった上質な小品、といった印象を受けます。

 

やりごたえのある大作タイトルや、終わりのないソーシャルゲームなどに疲れてしまった人、

ほのぼのした雰囲気のゲームが好きで、ゆっくり1週間も遊べばクリアできる「ちょうどいいゲーム」を探している人にはオススメできる作品かもしれません。

 

あと、可愛く動く猫耳少女が好きな人にも多分オススメ。

シリアスゲーム『My Child Lebensborn』をプレイした感想

「楽しい気持ちになれるもの」をゲームとするなら、本作はゲームにあらず。

「心を揺さぶられるもの」をゲームとするなら、本作は紛れもなくゲームである。

 

今までプレイしてきた中でも、なかなかに衝撃的な体験をしたゲームの紹介です。

 

『My Child Lebensborn』(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)は、とある事情で養子に引き取った子供を、プレイヤーが育てていく育成シミュレーションゲームです。

そしてもう一つ、このゲームをカテゴライズするとすれば「シリアスゲーム」となります。
(※シリアスゲーム = 純粋な娯楽目的でなく、社会問題についての示唆などが含まれているゲーム)

My Child Lebensbornのゲーム画面

My Child Lebensborn


起動時に警告がありますが、本作にはいじめや虐待、迫害などの不快な描写が含まれており、プレイする人をとても選びます。

また、戦時のナチスドイツとノルウェーの民族問題を扱っており、テーマも非常にセンシティブになっています。

 

皆さんが、普通の「育成ゲーム」といえば思い描くのは次のようなゲームではないでしょうか。

『愛情を注ぎ、子供からの問いかけに真摯に答えていれば、子供はすくすくと健全に育ってくれるし、直面する辛い問題は努力できっと克服できる』

 

しかしこのゲームは、そんな常識を木っ端微塵に打ち砕いてきます。

 

裕福でない暮らしをする主人公は、毎日を頑張って行動していても、子供のお腹も満足に満たせず、立派な服も買ってあげられない。

子供からの問いかけは、正直に答えて良いものか、真実を隠すべきか、難しい決断を迫られるものばかり。

そして子供の出自に関するいわれなき迫害と差別。学校でのいじめ。親としての自分が出来ることは非常に限られており、問題を満足に解決してあげることも出来ないジレンマ。

 

更にプレイ後に重い気持ちになるのは、これが決して架空の話ではなく、当時の(今でもなのかもしれません)ノルウェーに実際にあった物語、ということです。

 

ゲーム中のこととはいえ、辛く悲しい気持ちになるシーンが多いため、万人にオススメはなかなかしづらいのが正直なところです。

私自身、プレイしてよかったか(面白かったか)と尋ねられたら……、うーん……。「強烈な体験であった」と答えるべきでしょうか。

この作品がシリアスゲームの形を取ることで、選択肢の一つ一つに重みが生まれ、小説やドキュメンタリー映画であったら感じ取れない体験をした、とはいえるかもしれません。

 

実はこのゲームをプレイした私自身、子育てを始めたばかりの人間なのですが、これから子供にどう接していくのか。もしも子供の身に何かがあった場合、親としてどう行動するべきか。

答えのない問いを考えさせられてしまう。そんな体験を心に残したゲームでした。

未来ブログ

今日は久しぶりに友人に会ってきた。

彼とは今でもSNS(2020年頃に流行っていたインターネットサービスだ)で、年に何回か連絡を取り合っている仲だ。なんでも老舗のレストランに招待してくれるらしい。

 

朝、押入れの奥から外出用の洋服を取り出して身だしなみを整える。JRの地上線の電車に乗り、旧都方面へ向かう。駅に停車する度の慣性や、電車の揺れもなんだか懐かしい。 

銀座駅で降りたら、階段を使って地上へ上がり外へと出る。荒れたアスファルトを歩いていくと、待ち合わせ先の店はなんとも趣深い立派なガラス窓とコンクリート製のビルだった。

 

店の前に着くと人間の姿があった。友人と久しぶりの再会。ああ、こんな顔だったかもしれない。彼も特別な日だと思っていたのか、上から下まで洋服を着ていた。

 古めかしい地上エレベーターに乗り8階へ。お店に入ると「いらっしゃいませ」と人間の声が迎えてくれた。

 

友人が選んでくれたお店はなんと人間のシェフが調理してくれるレストランだった。この店では天然牛肉のステーキを食べられるとのこと。シェフ自らガラスボトルのワインを手動式のオープナーで開けてくれた。

 若い頃に身に着けたことは身体が覚えているもので、今でも問題なく、ナイフやフォークは使うことができた。口頭での思い出話を楽しみながら、しばし食事を楽しんだ。

 

店を出るときに彼が料金の支払いに取り出したのはなんと日本銀行券の1万円札。
粋なオーナーの趣味で今でも現金会計をしているという。 

 

ああ、今日はなんだかとても懐かしく、若い頃のことを思い出す一日だった。

一般市民がデジタル改革担当大臣と話した話

先日、比較的レアだと思われる面白い体験をしたので、それを共有してみたく。

私、単なる一般市民なのですが、平井卓也デジタル改革担当大臣とオンラインで話すという機会がありました。


経緯について話してみます。

2020年10月9日に「デジタル改革アイデアボックス」(https://ideabox.cio.go.jp/)というサイトがオープンしたというニュースを目にしました。

これは政府が推進する「デジタル改革」について、広くアイデアや意見を募るといったもので、ログインをすれば誰でもネットから意見を投稿できるというもののようです。


私がこれを見たときにはサービス開始直後だったので、まだ投稿は4~5件くらいしかありませんでした。

この手のサイトは先行者利益(※最初に投稿した方が、多くの人の目に止まる)が働くので、せっかくだから試しに投稿してみるかと思い立ちまして。

ちょうど、その数週間前に自身のTwitterで「住所を繰り返し手書きする手間」についてツイートしていたので

という趣旨のことをアイデアとして投稿してみました。

そうすると、やはり狙い通りに先行者利益が効いたのか、この案に共感してくれる方が多かったのか、おかげさまで賛成ポイントも60ptほど付きまして、コメント欄には「内閣官房デジタル改革担当」からのレスもついてたりして、なかなかに私の自尊心が満たされました。



と、ここで話が終わりかと思ったのですが、後日メールでその内閣官房デジタル改革担当の方から連絡がきまして。「大変貴重なご意見だと思い、一度詳しく内容を聞かせて欲しい」とのこと。

この時点でかなりビックリしたのですが、その後やり取りをすると今度、平井卓也大臣が「デジタル改革アイデアボックス」利用者から直接ヒアリングする公開オンラインミーティングを行うので、それに参加してくれないかとのことでした。

ははぁ、なるほど。内容を聞かせてというのはこのリクルートだったわけですね。こんな降って湧いた面白い話、乗る以外の選択肢はないので、二つ返事で了解しました。



とはいえ、一般市民がオンラインとはいえ大臣と直接話すとなれば、的はずれなことを言って貴重な時間を無駄にさせてはいけないので、関連知識についてはちょっと事前に勉強しました。



住所などの情報を繰り返し記入させない「ワンスオンリー」という考え方は、少なくとも、2018年の自民党IT戦略特命委員会の資料には見つかりましたし、詳しく追えていないですが、おそらく10年以上前から(もっと前?)提唱されていることのようです。

ということはつまり、私が投稿した意見は別に、誰も気づいていなかった目新しいアイデアというわけではなく、政府の担当者の方にとっては百も承知の内容のはず。

ただ、それをわざわざ「アイデアボックス」というオープンな場で募り、多くのユーザーの支持がある意見を、大臣が公開ヒアリングで吸い上げましたよという事実固めは、今後施策を推進する上での後押しになりそうな気がします。

後から誰かが反対を言い出しても、「いやいや、オープンな場で議論して賛成意見が多数でしたから。広く国民の意見・要望を吸い上げた結果として進めている施策です」と言い切れますよね。



さて、平井卓也大臣とのオンラインミーティングに出た感想です。(ユーザー側からは全部5人参加でした)

基本的にはこちらからアイデアボックスに投稿した内容を再び言うだけなのですが、感心したのは平井大臣からのそれぞれの方への返しでして。(大臣相手に「感心」ってのも失礼だと思いますが)

例えば、ワンスオンリーという考え方は、エストニア(※IT先進国として有名らしい)では浸透していて、「エストニアでは、一度国が本人から得た情報は、おんなじことを聞いちゃいかんということになっている」というようなことがサラッとご本人の口から出てくるわけです。

YouTubeでオープン対話の様子も公開されているので、興味ある方は探してみれば良いと思いますが、他の方のアイデアについても、相当量の背景知識が頭に入っていてスラスラと問題点が出てくるというように感じました。

「大臣のようなお偉い人は、偉いだけで現場の知識は何にも分かっていないに違いない」というようなステレオタイプ(?)を抱いている人もいるかもしれませんが、少なくとも平井デジタル大臣については真逆の印象、現場レベルのこともよく分かっているトップだという印象を受けました。


もう一つ私が得た知見としましては、このオープン対話がニュース記事になったときの話でして。

ニュース記事は当然このミーティングをいちいち全文書き起こしはしませんので、マイナンバー義務化の話とかも(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020101601138)こんな感じで、かなり端折った記事になります。

この記事中の「持たなければ生きていけない世界に」みたいな表現が目に付かないでしょうか? このニュースだけを見た人は「国が強制的に個人情報を管理する」的な印象を受けたりはしないでしょうか?(ニュースへの反応コメントを見ていると実際そういうコメもちらほらと)



ただ、この部分は
エストニアは2002年からマイナンバー始めて、義務化しても取得率全然上がらなかったけど、金融で便利なサービスが始まったら一気に普及したと聞いている」(だから義務化とか罰則化をするよりも、便利なサービスを作ることが普及には大事)
というニュアンスで受け答えをしています。

実際のミーティングに参加した身としては背景が分かって話しているんだなという納得感を私は感じましたし、個人情報の収集や利用に関しては大臣を始め関係者の方は「本人の同意をもって」ということを繰り返し言っているので、強制的に支配するようなニュアンスは全然無いように感じました。

それがこうして簡潔なニュース記事としてまとめられてしまうのですから、記者に悪意がなかったとしても、私たちは普段ニュースでは相当に端折られた内容しか読んでいないんだな、というのを改めて実感しますね。



今回、最初の投稿は自尊心を満たしたいくらいの軽い気持ちだったのですが、他のユーザーから評価ポイントを貰えて、それが大臣に直接話しを聞いてもらえて、実際に政策の後押しになっているのかもしれないというのは悪い気はしません。

自分達の将来の生活を便利にするために役立てているという実感があって、政治へ興味を持ってみるのも面白いもんだなと感じています。

10年後くらいの未来に、私たちが引っ越し手続きや民間サービスの利用時に「そういえば、昔と比べて住所を手書きしたりすること無くなったな……」と思える生活が実現していてほしいですね。

そういった便利な未来を実現するために、デジタル庁の改革を応援しています。

高難度4回転ジャンプの成功者数を調べてみた(フィギュアスケート2020/2021の基礎点変更について)

フィギュアスケート2020/2021シーズンのルール改正が、2020年5月11日にISU(国際スケート連盟)から発表されました。

その中でも注目なのが、4回転ループ、4回転フリップ、4回転ルッツの基礎点変更です。今回はこれについて「ジャンプ成功者の人数」の観点から考察してみました。

Communication No. 2323
SINGLE & PAIR SKATING Scale of Values season 2020/21
https://www.isu.org/figure-skating/rules/fsk-communications/24331-2323-sp-sov-changes-for-season-2020-21/file (pdf)


今までフィギュアスケートの6種のジャンプは難易度の序列が明確に決まっていました。

トウループ(T) < サルコウ(S) < ループ(Lo) < フリップ(F) < ルッツ(Lz) << アクセル(A)

それぞれの基礎点も上記の大小関係の通りとなっていました。(バランス調整こそあれど)


それが今回、高難度の4回転(ループ、フリップ、ルッツ)において、3つのジャンプの基礎点が横並びで設定されたのです。

2019/2020 2020/2021
4Lo
10.5
11.0
4F
11.0
11.0
4Lz
11.5
11.0

ルッツは(アクセルを除く)5種のジャンプの中で、最高難度のジャンプと言われてきました。フィギュアスケート界で長く言われていたその難易度が間違っていたというのでしょうか?


ジャンプ成功者数を調べてみた

そこで、実際にこれらのジャンプがどのくらい跳ばれているのか過去の成功者数を調べてみました。
調査にはフィギュアスケート要素検索さん(http://fses.sakuraweb.com/)を使わせて頂きました。ありがとうございます。

調査手順

1)4Lo、4F、4Lz の実施回数を検索する
2)ダウングレード(<<)、アンダーローテーション(<)については除外。
3)+COMBOやセカンドジャンプのエラーなどは、そのジャンプ単体としては成功しているので採用。
4)転倒(Fall)はGOE値から一律に判定できないため、少なくとも「回りきった」として成功に含める。
5)上記から、選手名の重複を除く。

調査結果

4Lo 男子 6人(女子 0人)
4F 男子 6人(女子 2人)
4Lz 男子 19人(女子 3人)


どうでしょうか。4回転ループ、4回転フリップに比べて、圧倒的に4回転ルッツの成功者が多いですね。
高得点を取るために皆が難易度の高いルッツに挑戦している、と考えることも不可能ではないですが自然ではありません。(より簡単に跳べる4回転があるなら、皆そちらを練習するでしょう)
つまり、この人数からは「4回転ルッツの難易度が想定ほどには難しくなかった」と言えるのではないでしょうか。



(※以下は、私の脳内での推察になります)

なぜ点数調整に至ったのか?

ISUが実際にどのような理由で判断したのかは分かりませんが、私は下記のように推察しています。

  • ジャンプの基礎点は、その難易度を元に設定している。(前提)
  • そもそも数年前まで、高難度4回転ジャンプを跳べる人類はごく僅かだった。
  • そのため、高難度4回転ジャンプの基礎点は想像で決めるしかなく、3回転までの基礎点を元に推定していた。
  • 実際に跳ぶ選手が出てきた結果、意外と皆が4回転ルッツを跳べることが分かってきたので、実情に合わせてバランス調整した。
  • 但し、今回は ループ < フリップ < ルッツ の基礎点の順序を逆転させるまでには至らず点数を同じにするに留めた。

という感じではないでしょうか。


このような下方修正が入れられると毎回「難しい要素に挑戦した人のやる気を削いでいる」などと言う人も出てくるのですが、実情に併せて適切なバランスに調整し続けるのは当然必要なことと考えます。
(もちろん、賢明な読者の皆さんなら「特定の選手を贔屓するために点数を操作したんだ」などというような陰謀論には与しないことでしょう :-P)


なぜ難易度が逆転する?

さて、では何故このような難易度の序列の変化が起こるのでしょうか?
私自身は4回転ルッツはもちろん1回転ジャンプも跳べませんので、以下はあくまで推測になりますが、次のように考えられるのではないでしょうか。

  • ルッツは逆カーブからの踏切になるため、ジャンプと反対方向の回転モーメントが身体に掛かる。
  • その回転力の打ち消しがルッツ特有の難しさの理由。
  • ただし、回転数が1→4回転になっても打ち消すべきモーメント量は4倍にはならない。
  • 最初に逆カーブ分の回転力さえ打ち消してしまえば、後は回るだけというのは他のジャンプと同じ。
  • つまり回転数が増えるほど、ルッツ特有の難しさは比重が下がってくる。
  • また、ルッツはトウジャンプのため、4回転するための高さを稼ぎやすいジャンプである。

という理由が考えられそうです。一方、ループジャンプはというと、

  • ループはエッジジャンプのため脚力による高さが稼ぎにくい。
  • 同じエッジジャンプのサルコウと比べても、スピードを高さに変換しにくいフォームのように思える。
  • ループは1回転ジャンプにおいては比較的跳びやすい。
  • 4回転の域に達してくると、高さそのものを稼ぎにくいことによる難易度が顕著になってくる。

ということではないでしょうか。


この記事がフィギュアスケート2020/2021ルール改定のジャンプの基礎点変更について、皆さんの理解の助けになれば幸いです。

傑作インディーズパズルゲーム『Baba Is You』を紹介する

『Baba Is You』はインディーズのパズルゲームで、2019年にPCとニンテンドーSwitch向けに販売されています。価格は1500円なのでお手頃。


とにかくこのゲームはルールが斬新で、「システムの斬新さに舌を巻いた」という意味では過去最高クラスの驚きを感じたパズルゲームかもしれません。

特に私がプログラマを生業としているから余計にそう感じるのかもしれないですが、プログラム設計的にエレガントであることが明らかに見て取れるシステムなのに、その発想は思いつなかった……という衝撃を感じましたね。

Baba Is Youの斬新なルール

このゲームのルールを説明すると、『倉庫番』のようにブロックを押してゴールにたどり着くというのが基本ルール。

Baba Is Youのゲーム画面
Baba Is Youのゲーム画面

なのだけど、マップ中にゲームのルール自体を記述しているブロックが存在するのが最大の特徴で、例えば基本的なものでは、

[BABA] [IS] [YOU] 自分はBABA(四足のキャラ)を操作して移動できる。
[FLAG] [IS] [WIN] 旗にタッチすればその面をクリアできる。
[ROCK] [IS] [PUSH] 岩は押せる。
[WALL] [IS] [STOP] 壁は通行不可。

などがあります。

ここから、例えば、
[WALL] [IS] [STOP] を押してずらせば、背景の壁はそのまま通過できるし、
[ROCK] [IS] [WIN] というルールを並べれば、岩をタッチしてもクリアになる。
[BABA] [IS] [YOU] をずらすと、その世界にプレイヤーは居なくなるので、詰み。
[WALL] [IS] [YOU] にすると全ての壁は「自分」となるので、全部の壁ブロックが一斉に動き出すなんてことも。

このように1つの面の中でルール自体が変わっていき、このシステムによって一筋縄ではいかないステージデザインが生まれているんですね。

例えば奥に見えている旗をタッチすればクリアと見せかけて、旗を「自分」にしてから、岩を勝利条件にして、旗で岩を触りに行かないとクリアできない。といった感じで、発想の転換が求められることがしばしばあります。


ちょっと自分の想像と違ったのは、「ブロックの組み換えで、ステージ制作者の意図していない自由度のあるクリア方法を楽しむ」というタイプのゲームでは無かったということ。

最初の数ステージはそのように、作者が想定していないであろう方法でクリアできてしまう面もあるものの、少しステージが進むとそのような「抜け道」的なクリアはできないように綿密に設計されています。

ただ、それが面白さを損ねるというわけではなく、そこから先は緻密に練られたパズルとガチンコで対決していくという趣になってますね。


私はパズルゲームは得意な方と自認しているのですが、カジュアルなパズルゲームでは「ほぼチュートリアル」のような簡単すぎるステージを、延々とクリアさせられるということがよくあります。

ですが、本作『Baba Is You』ではそんなことはなく、ほんの3,4ステージ目で「……え? これ、どうするの……?」と悩んでしまう、歯ごたえがある面に遭遇します。

それでも試行錯誤してよく考えていると、「ああーっ!そういうことか!」としっかりと解法が見つかるのですが(当たり前か)。

状態遷移の量。逆算不可能なゴール条件

倉庫番』のようなゲームに比べて、一画面中で起こり得る「状態遷移の量」が多く、それが難易度を上げているのが本作の特徴かもしれません。

通常のパズルゲームはゴールが明確に設定されているため、そこから逆算することである程度のルートを絞り込むことができます。それを無意識的にやっている人も多いでしょう。

(旗がそこにあるということは、最低でも最後の形はこうなっている必要があって、それを満たすためには……なるほど分かったかも)というように。


それが本作では、旗がゴールとは限らない。カギがあるからといってそれで扉を開けるとは限らない。自分が何か別なオブジェクトになる可能性もある。のように、考えられる「状態遷移の量」が明らかに他のゲームより多いです。

そしてゴール条件からの逆算が効かないことから、正解ルートが分からずに試行錯誤を要求されることもある。

それだけ1画面のステージの中に濃密なパズルが詰め込まれていることになります。


そして、1つ1つのステージデザインもとても秀逸ですね。パズルゲームはルールとレベルデザイン、どちらが欠けても手落ちになってしまうものですが、本作はそこのクオリティも素晴らしい。

パズルに自信のある人には特におすすめ

本作では、ステージをある程度スキップしても先のワールドに進める設計になっているのですが、私はすでにギブアップしてスキップしている面がいくつもあります。普段なら、ステージを取りこぼすようなことは殆どないのに……。

特にエクストラとされている難関ステージは本当に難しい。いつかチャレンジしようとは思っていますが。

というわけで、斬新なルールと奥深いステージデザインが両立するこの『Baba Is You』。パズルに自信のある人、歯ごたえのあるパズルゲームを求めている人、頭の柔軟さに自信のある人には特におすすめしたいゲームですね。


ec.nintendo.com

仕事中にかけるカフェミュージック(作業用BGM)

ここ数日、仕事中にスマホで、いわゆるカフェミュージック(ジャズとかボサノバとか)の「作業用BGM」をYoutubeでかけっぱなしにしてみたところ、割と集中できている気がする。
 
「なぜ、作業用BGMをかけると集中できるのか?」の作用機序を考えてみたら、自分なりの結論が出た、気がするので書き記しておく。
 
 
プログラム作業してると、コンバート待ちとかコンパイル待ちとか一瞬の時間の隙間が出てくる。
 
これは自分の脳みその場合なのだが、どうもそのような脳がぽっかりと空白になるスキマ時間があると、すぐ「このスキマ時間で何か他のことができないか…!」と他のことに興味が向いてしまうことが多々あるようである。
 
良く言えば好奇心旺盛、悪く言えば落ち着きのない脳みその傾向があるのだと思う。
 
 
そこでカフェBGMの特徴を考えると、
・聴くのに集中力は要さない
・音楽中に、注意や興味をひくような要素がない
・しかし、流しておくと脳みそのリソースをわずかに消費してくれる
ということが挙げられる。
 
 
このような音楽が脳みそのスキマを適度に埋めてくれることで、脳みその稼働量がゼロにはならないため、脳みその興味が他に移ってしまうことを阻止しているのではないだろうか?
 
 
今までの経験だと、他にはダンスミュージックの中でもトランスのような音楽が集中力向上に良い効果を上げている気がする。これも、ダンスミュージックの中でも一定のリズム、フィルターエフェクトを中心とした自然に推移する音楽展開など、脳みそのリソースを邪魔しにくい音楽だから、の気がする。
 
 
逆に、自分が好きすぎるゲーム音楽とかは意識がそっちに向きすぎてしまうし、言語野のリソースを消費する必要のあるボーカル曲も向かなそうである。またはWebラジオとかはそもそも並行タスクできないから適さない。
 
ただ、当たり障りのない話題をダラダラとしゃべっているトーク番組なんかを「BGM」として流すのはありかもしれない。