データリテラシのすすめ

マスコミはさまざまなデータ(統計データなど)を駆使して、私たちをミスリードしようと画策している。私たちはデータの解読力を高めこれらのミスリードに引っかからないようにしないといけない。(そして、周囲の人が容易くミスリードに引っかかっていたら教えてあげよう)
ちょうど格好の教材を見つけたので例として取り上げてみる。

入社試験、25%が“辞退” JR西日本、事故影響?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050509-00000073-kyodo-soci
共同通信

上記はYahoo!ニュースに掲載されていた共同通信社のニュース記事である。いかにも先日の事故の影響で25%もの人間が入社試験を辞退した、といいたげな見出しである。これが事実だとしたら実にマスコミの好みそうなニュースだと言うのは分かるだろう。しかし、この25%という数字は、本当に先日の事故の影響だろうか? と私たちは疑わなくてはならない。
記事の本文はこうである。

 JR西日本が京都支社(京都市)で8日実施した福知山線脱線事故後初めての入社試験で、申し込みをした132人のうち25%に当たる33人が受験を“辞退”したことが9日、分かった。
 同社によると、8日は運転士や技術職員になる「鉄道職」の1次選考初日。昨年は、初日の申込者171人のうち136人が受験。今年の受験率は昨年より4ポイント低い75%にとどまった。
(後略)

幸いにも昨年のデータが出ているので比較することができる。これが昨年より明らかに状況が悪化していれば「先日の事故の影響である」という「可能性もあり得る」だろう。
データを比較してみると……。

今年の申し込み132人 受験 99人 辞退33人 受験率75%
昨年の申し込み171人 受験136人 辞退35人 受験率79%

比較してみれば何の事はない。たかだか4%減である。この人数でこの程度の誤差は統計学上、有意差とは言えない。実のところ「前年とはほとんど変わりなし」というのがデータから読み取れる結論である。
しかしマスコミは、決してこれを「前年比4%の辞退率増」とは書かない。「4%」という数字では読者を煽るだけのインパクトに欠けるからだ。そこで、数字としてインパクトのある「25%が“辞退”」などと言う、反則スレスレの見出しを用意してくるのである。
世の中のあらゆるデータは表記の仕方次第でいくらでも印象を変えることができる。ニュース記事や広告記事で出てくるデータは、必ずマスコミや広告主にとって都合のいい表現をされている。私たちはこのようなミスリードに騙されてはいけない。
(余談だが、解釈の仕方によっては、上記の記事を「前年より辞退者が減少!」と書くこともできるのである)